「森鴎外」カテゴリーの記事一覧

いつの頃であつたか

  • 森鴎外

多分江戸で白河樂翁侯が政柄を執つてゐた寛政の頃ででもあつただらう。智恩院の櫻が入相の鐘に散る春の夕に、これまで類のない、珍らしい罪人が高瀬舟に載せられた。それは名を喜助と云つて...

暫くして、庄兵衞はこらへ切れなくなつて呼び掛けた

  • 森鴎外

「喜助。お前何を思つてゐるのか。」「はい」と云つてあたりを見廻した喜助は、何事をかお役人に見咎められたのではないかと氣遣ふらしく、居ずまひを直して庄兵衞の氣色を伺つた。庄兵衞は...

高瀬舟は京都の高瀬川を上下する小舟である

  • 森鴎外

川時代に京都の罪人が遠島を申し渡されると、本人の親類が牢屋敷へ呼び出されて、そこで暇乞をすることを許された。それから罪人は高瀬舟に載せられて、大阪へ廻されることであつた。それを...