九月始めになって、私はいよいよまた東京へ出ようとした

ブログのサンプル文章として版権切れの小説を表示しています。私は父に向かって当分今まで通り学資を送ってくれるようにと頼んだ。

「ここにこうしていたって、あなたのおっしゃる通りの地位が得られるものじゃないですから」

私は父の希望する地位を得るために東京へ行くような事をいった。

「無論口の見付かるまでで好いですから」ともいった。

私は心のうちで、その口は到底私の頭の上に落ちて来ないと思っていた。けれども事情にうとい父はまたあくまでもその反対を信じていた。

「そりゃ僅の間の事だろうから、どうにか都合してやろう。その代り永くはいけないよ。相当の地位を得次第独立しなくっちゃ。元来学校を出た以上、出たあくる日から他の世話になんぞなるものじゃないんだから。今の若いものは、金を使う道だけ心得ていて、金を取る方は全く考えていないようだね」

父はこの外にもまだ色々の小言をいった。その中には、「昔の親は子に食わせてもらったのに、今の親は子に食われるだけだ」などという言葉があった。それらを私はただ黙って聞いていた。

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